観た!

観客。

草なぎ剛という役者


アイドルグループとしては、そろそろ嵐に世代交代の感のあるSMAPだが、個々を見たとき、SMAPはそれぞれが持ち味のあるいい俳優がそろっていると思う。


中でも草なぎはある種傑出しているかもしれない。


komugiko00とshinbashiの間では、彼のことを「心の無い人」と呼んでいる。
「心無い」という慣用句とは違うので誤解のないよう。
なんというか、神経が何本か抜けている。ジャニーズに入ったばかりのころ、あの東山をして「この子はだいじょうぶなのかな?」と心配させたという、ある種のバランスの欠けた無神経ぶりがある。
まったくのイノセントな神経のなさ。


だから、心が無いから、そこにすっぽり役柄が入るんじゃないかと思う。


以前、草なぎがドラマ主演中に、香取慎吾が番組取材でセットに訪れたことがある。
セットに入り、「いつもここでやってるんだー」という感じで見て回り、「ここに座ってあのシーンやってよ」と、普通で考えれば少々な無茶ぶりをした。
草なぎはすぐさまそこに座り、もう顔つきが変わっている。
さすがの慎吾が、「もう入れちゃうの?! もう?!」と言っていた。
なんていうかこう、サンダーバード2号のように、胸がそもそも空洞で、そこに「役」というカートリッジをパコっとはめこんだように、入れてしまうのだ。


唐沢寿明が、中村勘三郎との対談で、ジャニーズ馬鹿にしたもんじゃないと語っていた。
曰く、俺ら役作りとか言って何か月もかけて集中して作り上げてってやってるじゃない、でもジャニーズの連中は、さっきまでバラエティでワーワーやってて、そのままやってきてすぐに撮影に入れる、入ってそれで生半可なもんじゃない、ちゃんとした演技ができる、あいつら馬鹿にしたもんじゃないって。


草なぎなんかその最たるものだろう。


無神経だからいい演技ができるとして、もしかしたらアレと似ているところもあるのかも。
篠井英介がガートルードを演じたときに言っていた言葉。
「この役はいろんな女優さんがいろんな解釈や思い入れで演じてきた。でも、シェークスピアが書いたときは、『女なんてこんなもの』という程度で書かれたんじゃないか。女優でなく女形だから、そこを思い入れ抜きで演じることができると思う」
このガートルードは絶品だった。


草なぎは篠井ほどの意識さえ無い感じがする。


とかかねがね思っていたら。
これもずいぶん前になっちゃうけど、映画『山のあなた〜徳市の恋』の宣伝番組での話だ。
共演した堤真一が、同じようなことを言っていた。もうちょっと表現には気を使ってたけど(^^;
草なぎ君はとてもピュアで、心の中に余計なものがない感じがする。その何もないところに役柄がすっと入っていく。特異な役者さんだと思う。


ををっ。共演者がいうだから、ほんとうにそうなのだろう。


今後も「心の無い」演技を見たいものだ……っていうか、彼が変わることは決してないと思う。


※ところで、『ヒルズに恋して』改め『恋に落ちたら』は、shinbashiがはまって見ていたが、あの主人公のイノセンス、善意にも営利にも振れて力を持つイノセンスは、じつに草なぎ本人に合っていて魅力的だったと思う。そういえばここでも堤が共演していた。