観た!

観客。

公的な場で酔ったような


例によって日本のマスコミの感覚的なしつこさが鼻についてきた今日この頃なので書きたくなくもあるが、なかがわもとざいむだいじんの「飲酒」会見で、ちょっといくつか本を思い出したので、書く。本のことが主題ね。


あの日、komugiko00が何気なくテレビをつけたら、いきなり例の会見の映像が流されていて、ぎくりとした。
小渕元首相の例を思い出したのである。会見中に無表情な沈黙があり、後に急死した(沈黙は脳梗塞計の症状と言われている)、あの会見の映像が浮かんだのだ。中川さんも同じように会見中に何か症状が出たのか?! と思ったのである。
今回は飲酒ということらしいけど。
……いや、これについては飲酒だと思う。個人的に。だってコムギコがテレビを見て瞬間的にギクリとしたのである。周囲があれを放置していたということは、「この人は病気ではない」という何らかの根拠を持っていたということであろう。
あの状況で酔っ払いを放置していたのは職務怠慢のきわみだが、病人を放置していたのなら人間として残忍である。最悪以上に悪い。


思い出した本の一つ。
上野正彦の『死体は語る』。
コムギコお気に入りの漫画&ドラマ『きらきらひかる』(http://d.hatena.ne.jp/komugiko00/20080924/1222269826)の参考文献でもあり、法医学ものの走りであると思われる。
監察医として手がけた事例を上げ、監察医の「目」から見える人間の生を感じさせる、エッセイ集である。監察医であるから変死をテーマにし、変死には人間的なしがらみや感情が結びついていたりするわけだが、客観とやわらかさの絶妙なバランスで読ませてくれる。冷たいやさしさ系。


この中の「死者は雄弁である」というエッセイで出てくるのが、みんなに姿を見られていた酔っ払いが、死んでいた例である。
故人はいつも酒を飲んでいて周囲からは「酔っ払い」として認識されていた。そのときも大声を出したり暴れたりしていて、酒臭かった。誰もが酔っ払いとして扱った。
半日後に死んだ。
酒の上でのことだが頭に怪我をし、表面的なものかと思いきや頭蓋骨骨折をしていた、ということなのだ。大声を出したのも、暴れたのも、酒だけではなく脳障害の症状でもあったらしい。



つねに「酔っ払い」「酒癖が悪い」と思われている人であれば、酒のついでに一服盛れば、簡単に失脚させられるな、とも思った。
酒を飲んでいるのも事実だが、「酔っ払って」いるのは薬のせい、という状態を作った場合、見た人は「また酔っ払っている」「こんな場でまで酔っ払っている」としか受け取らないだろう。


酒と絡めてはいなかったと思うが、公共の場に出るときに薬を盛って失態をさせる(重病であっても、大切な仕事ができないのには変わりない)という陰謀は、村上龍の『愛と幻想のファシズム』と、その元ネタである望月三起也の『ジャパッシュ』にもあった。


とびとびにしか読んでいないので判らないが、『ゴルゴ13』なんかにもありそうな……。


死体は語る (文春文庫)

死体は語る (文春文庫)

愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)

愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)

ジャパッシュ (ぶんか社コミック文庫)

ジャパッシュ (ぶんか社コミック文庫)