観た!

観客。

ジキル博士とハイド氏

先日テレビで、「あらすじでわかる世界の名作」みたいな企画をやっていた。
前にあった「日本人が好きな偉人」みたいなつくりで、芸能人が名作を選んであらすじを寸劇(コント風に見えた)にしてみせる、というものだった、らしい。
らしい、というのはヤだから見なかったからだが。


で、今日会った若い知人が見たという。どうだった?
「あまりおもしろくなかった。『ジキル博士とハイド氏』しか見なかったけど」
んーー、君のように本を読むのが苦にならないタイプは、本を読むことをお勧めする、と言っておいた。


あれはイギリスの話だから、英語で読むのが一番なのだろうが、私は日本語で読んだ(ってそれでふつうなんだけど、私の場合)。


それでも、まだ最初のほう、事態が見えていないころ、夜、窓の外に石畳を走る重い靴音が聞こえてくる……。その部分の描写だけで、十分「怖い」と感じた記憶がある。
この、見えないものへの正体の知れない恐怖は、文字で読むのが一番……だと思う。


この本を読んだのは確か中学一年のときだったと思う。子供向けの簡略版ではなく、原作のままの翻訳だ。
そのときにはすでに、おおよその設定は知っていたかもしれない。何しろ慣用句的に有名なものだから。だが、どうだったかわすれた。
その後映画も見たが、これもほとんど忘れた。
鮮明に覚えているのは、あの、夜の街路を走る重い靴音だ。


……一度読んだだけで読み返していないので、果たして正確にそういう場面や描写があったかどうか自信がなくなってきた。
だが、「たとえばそういうふうな」、つや消しの不安を感じさせる作品であることは、たぶん、間違いない。


ジキル博士とハイド氏 (創元推理文庫)

ジキル博士とハイド氏 (創元推理文庫)