中国京劇院「三国志〜諸葛孔明」
於 中野サンプラザ
komugko00生涯3度目の京劇である。
ほんとうは3度目は数年前のはずだったのだが、SARSのため来日できず、チケット払い戻しに。
京劇はよく知らないので、チケットもてきとーに取った。よく知らなくても「梅蘭芳」の名前は知っているので、その創設した劇団なら間違いないだろう的な選び方である。
初めて見たのは『白蛇伝』で、それが強く印象に残っているので、もう一度見たかった。前に行ったときは人にもらったチケットで……どの劇団だか記憶がない(というより、京劇に複数の劇団があることも知らなかった)。
ある意味歌舞伎と同じである。かつて長い芝居として作られた、いい場面だけを並べて現代演劇の長さに作ってある。まあ、三国志はそこそこストーリーは知っているので、それでも大丈夫だと思った。
実際、名場面集だった。
五丈原〜三顧の礼〜長坂破(つちへん)〜赤壁の戦い〜空城計〜五丈原
というわけで。
今回はどちらかというと歌を聞かせる演出だったと思う。
京劇らしい(と素人が思う)アクロバティックな振り付けが繰り広げられるのは赤壁だけだ。ここはもちろん楽しかったが、記憶の中の『白蛇伝』の方が、数段ハデで鮮やかだった気がする。実際そうだったのか、それとも初めて+記憶でふくらんで記憶しているのか。
派手なアクトを期待するほうとしては、最後、「え!? 忠達が走るところやらないんだ!」でもあった。最後にそこを派手にやってくれると思ったのに、孔明が死んで、先に死んでいる劉備とかが出てきて……終わった。
うーむ。
孔明役の張建国のノドを聞かせるところがたくさんあった。ラストもほとんどそうである。
確かに鍛え抜かれたいいノドだと思うが……だめだ、それ以上わからん。
セリフも、「ここの台詞回しがたまらん!」なのかもしれないが、これもわからず。
関係ないけど思い出したのが、野村萬斎のハムレット。よくなかった。アレは演出家がイギリス人だったからだと思う。彼は萬斎の日本語が他の役者の日本語と違うことがわからなかったろうし、伝統芸能の役者の体も知らなかったのだろう……と思ったのを思い出していた。
慣れていないものはわからない。
とはいえ「動き」は多少わかる。
京劇の動きは、「きめ」はあるけど、「流れる動き」だと思った。
モーリス・ベジャールのバレエで、カブキ、というのがある。忠臣蔵をバレエにしたのである。他の演目でもカブキ風の振り付けがある場合がある。
これが、komugiko00キモチワルイ。
表面的な「ぽーず」はカブキなのである。だが、内部の筋肉が歌舞伎のようには動いていない。
たとえば手を伸ばすうごき。
歌舞伎は、伸ばして、伸びきったところでとめる……というより少し力を方の方向へ戻すぐらいの感覚がある。それで決まる。それがバレエだとすんなりと指先へ力を流す。それで決まる。
なのでバレエの力の流れで歌舞伎の「ポーズ」を次々にやられると、歌舞伎を見慣れているものとしては気持ち悪かったのだ。まあ、おかげで、「型」は「ポーズ」ではないということがよおくわかったが。
京劇は、歌舞伎の「見得」のようなところはあるが、基本的に動きは流れる。とまらない。力は戻らない。
かといってバレエともちがう。
こう、鉛筆を持って紙の上にすう〜っと流線を描き続ける、あの感覚である。
あれは、見慣れてくればおもしろいだろうな。
komugiko00は、中村勘三郎を「手を伸ばせば劇場の空気をぐいっと動かすことのできる役者」と言っているが、べつの言い方をさせてもらえば、komugiko00が能や歌舞伎にはある程度なじんだので、それが見えるようになった客なのだ。
見慣れていなければ、たぶん役者の「動き」だけで、「空間」までは見えないのだと思う。
あ、そういう意味では、今回、席が前すぎたな。
komugiko00が芝居で前の席が必ずしも好きではないのは、「空間」が見えづらくなるからだ。特定の役者をクローズアップしたいときとかは前がいいけど(今まで前で見れて一番うれしかったのは、市村正親と夏木マリの怒鳴り合い)。
……ロックのライブでも、ちょっと引いた位置が好きなのは、もしかして「ライブ空間」が好きだから???……客に対しても「客」であるのか(^^;
ま、そういう感じでした。
アンコールの最後に、まあ、前のほうの席にいたのだが、周りの人たちがわあっと両手を挙げて振りはじめた。な、なんだ? 見ると、舞台上の役者も両手を振っている。
これ、役者が振ったから振ったの? それとも見慣れている人には普通のお作法なの? 「2れんちゃん」なの??
駅に向かう道で、周りの人が言っていた。
「あの歌がさ、また、切れ目がわからないのよ。ながれて、波打って、切れ目かな〜と思ったらまた続く……ちょっと眠気をさそう……」
わかる人にはわかるのか、それともイマイチな上演だったのか、私の鑑賞力では不明ですm(_ _)m
5回ぐらい見れば、ちったあわかるようになるだろう。
- 作者: 小川環樹,金田純一郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1988/07/07
- メディア: 文庫
- 購入: 1人
- この商品を含むブログ (5件) を見る
- 作者: 陳寿,裴松之
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1994/03
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 22回
- この商品を含むブログ (26件) を見る