高橋操・安達忠良人形展・四谷大運動会
東京四谷にあるギャラリー晩紅舎での二人展。
私は「動き」のあるアートが好きである。平面でも立体でも。静止した表現のよさがあるのは承知しているが、なんてったって「動き」に魅かれる。
その意味ではこの二人の作家は、「ツボ」。
高橋操(石粉粘土)
動きのあるポーズはもちろんいい。『新体操・フラフープ』など、まさに今にも動き出しそうというか動いているとしか思えない。
『ロッククライミング』は、正方形の額に入った半立体で、これが面白い。額なので、構造的に背景部分に平面がある。それを単に「背景」ではなくて、人工のロッククライミング練習壁(で伝わる?(^^;)に作っている。そこに半立体の後姿が張り付いている。んー、半立体という技法だから、現実に張り付いているわけだが、それがロッククライミングの人間が「張り付いている」姿と見事にシンクロ。この発想そのものがいい。さらにもちろんその張り付いた人間の動きが生きているわけで。よっぽど買っちゃおうかと思った(あ、買わなかったのは、私が超初心者だがいちおう人形作るからだ。作る人は買っちゃダメって、前に誰かに言われたから。だれに言われたかも忘れているのに守ることもないのだが(^^;)。
というわけで一番の「好き」は『ロッククライミング』なのだが、ひそかに「すごい」と思ったのは『新体操・ボール』だった。
これは案内葉書にも使われていたし、一番「きれい」な作品でもある。
でもすごいのは、きれいだからじゃない。
これは、ボールをもって、バランスをとって爪先立った……一瞬かも知れなが、「静止」のポーズなのだ。
この静止のポーズに動きがっ。太ももの辺りとか、全体の流れとか、明らかに「次の動き」への、今にも花開きそうな芽生えがっ。
三つのボールを手のひらや肩に乗せてバランスを取っているのだから、たとえシルエットが静止していたとしても、実際の体は「動き」を内包している。そして、粘土でこねられ、塗装された塊が、じつにその動きを内包していたのだ。
……すげえ。
安達忠良 (木)
「木」って書き方でいいのかな(^^;。もっとこう「木材」とか書き方あるのかもしれないけど、わからないので許してください。(和語より漢語がえらいと思ってるわけじゃないけど、用語ってのはあるのかなと思ったりして)。
安達の持ち味は「木切れ」「棒っ切れ」感にあるとおもう。
円空よりもっと知っちゃない感じ(まあテーマが違うし(^^;)。木をざっくり削って、その大きな刃跡もはっきりのこり、丸みとかdetailsなんてものはない。だからポーズ以前にその質感が動いている。
ポーズも動きがあるし、吊り下げたり仕掛けがあったりして実際に動くものもある。動かせる人形、ささやかな仕掛けのある人形、というのはちょっと憧れ。
そういう意味では、『卓球』(タイトルは正確に覚えていない。ともかく卓球をやっている人形)が一番好き。
卓球台の前にラケットを構えた人形がいる。この微妙な猫背具合が卓球選手っぽいなあと思いながら見ていると、頭にさわると、これが動くのだ!
んーー、べこ人形とか、あんな感じの「振る」動きなのだが、頭と肩が前後に動く、それがものすごく卓球っぽい。だって、べこだよ。単純な「振り」にすぎないよ。
すき。
スポーツがテーマということで、安達は流行の「イナバウアー」もしっかり作っていた。まあたこんな手垢のつきかけた流行物を……なんていうプチ批評なんぞ出てくる前から消えてしまう、ざっくり! であった。
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