観た!

観客。

"Sufi Music From Turkey"

スーフィー教の旋回舞踏を初めて知ったのは、澁澤龍彦のいずれかの著作からだったと思う。
挿絵がついていて、高いトルコ帽にスカートのような長い白い衣装を着た人々が両腕を広げて旋回している様子に、アルファ波をかきたてられたものだ。
スーフィー教がどんな宗教であるかも記されていたはずだが、それはわりとどうでもよくて、その旋回している人々の「絵」から半透明の建物が立ち上がり、自分はその大きな空間の中で、おそらく柱の影か隣の部屋からそれを漫然と眺めている、そんな気分に囚われた。
事実を記した文章だったが、受け取り方は多分に幻想的だった。


その後、国立劇場で『アジアの神・歌・舞』という企画があった。「アジア」に分類される10カ国ほどから神・歌・舞を持ち寄って、舞台で見せるというものだ。日本からはアイヌの熊祭が出ていた。
その企画全体もkomugiko00の関心の領域であったが、勇んで足を運んだのは、プログラムの最後に、スーフィー教の旋回舞踏があったからだ。


各国のものが紹介され、最後にいたって、舞台が無人であるときにアナウンスが入った。曰く、スーフィー教の旋回舞踏は本来人に見せるためのものではなく、宗教儀式であるので、拍手などはしないように、ということである。
そういう意味ではよくもってきたなあ。異文化コミュニケーションの重要性の認識の賜物であろうか。


そして、観た。現実に。
絵で見たとおりの格好をした人々が、音に乗せて旋回する。無心になる方法の一つと思われる。年齢の高い人はやや遅く、若い人はやや早く、おのおののペースで回る。一人、少し首をかしげ、わずかに緩急をつけて陶酔した感じで回っている若者がいたが、たぶんあれは主旨からはずれている。
場所は幻想したような石造りの建物でなく、歌舞伎でおなじみの国立劇場であったけれども、旋回舞踏は想像したとおり素敵だった。


白い衣装の人々は、その後もときどき頭の中で回った。
CD店で「sufi」の文字を見たのは偶然であったけれども、買った。
どんな音楽かというと、全身これ「音遊」である(ラーメンズ『雀』参照)。こういう音階なのか。
ときどき、これをかけながら回ってみる。気持ちいい。でもすぐ目が回る。ゆっくり回ってみても、目が回る。コツがあるのか訓練なのか。
体が回らなくても、頭の中がまわればよい、ということにする。
独自の宗教である。


トルコのスーフィー音楽 (Sufi Music from Turkey)

トルコのスーフィー音楽 (Sufi Music from Turkey)