観た!

観客。

大掃除の功徳


komugiko00の大邸宅には、「魔窟」と呼ばれる地域があった。そう、さながらあの九龍城砦のような。
ここ2年ほど公私の忙しさにかまけて、嫌いな掃除を最低限にしているうちに、魔窟は次第に成長していた。さながらあの九龍城砦のように。
そして昨日、ついにその魔窟を破壊すべく、重機が入った!
そして発見したものは?!


『躁鬱時代』 日本錦鯉ノ会 稀田ラリ子 1993年発行


そう、いわゆるバンド系同人誌である。
んー、あれから13年たったのか……遠い目。
これは当時18・9歳の好青年がかのコミケで買ってきてくれたものだ。そう、中学高校と運動部に専念し(インターハイも出た)、高校卒業と同時にスポーツをやめてサブカルデビューした好青年である。
もともとマンガが好きで、コミケというもののことも聞いていたが、そんなものにでかけるひまもなかった彼は、嬉々として出かけていった。その1週間前。

彼「バンド系っていうジャンルもあるんです。ぼく最近好きなバンドがあるんで、いってみようと思って」
komugiko00「あ〜、人間椅子も見てきてくれる? 目に付いたらでいいから」
彼「いいですよ、どんなのがいいですか?」
komugiko00「任せる。○○くんのセンス信頼してるから」


自分では行ったことがなかったが、コミケの「バンド系」の傾向を知らないわけではないkomugiko00であった。そこへ何も知らない好青年を送り込んだのある。……友人から「ドS(しかも無自覚)」と呼ばれるのはこういうところであらうか。


彼の初コミケ後に会ったとき。
komugiko00「どうだった?」
彼「驚きました。みんな真っ黒な服着た人ばっかりなんで。夏だから白シャツ着てっちゃって、すごく目立っちゃいました。それにほとんど女の人で」
komugiko00「そうなんだ〜、そうとは聞いてたけど、ほんとにそうなんだね」←今頃言う。


しかし彼はしっかり列に並んで自分の目的のものをゲットし、なおかつ人間椅子のものも全部チェックして、買ってきてくれていた。それが『躁鬱時代』である。
彼「ほかのもいろいろあったんですけど、なんかもっと……ああいうのだとは思いませんでした」


はいはい、世に言うやおい系っていうんですか? それが多いとは聞いてました。そこに何も知らない好青年を送り込んだkomugiko00。
彼を「好青年」と呼ぶのは、だてではない。ルックスもよく、よき運動部らしい真っ直ぐな姿勢と風情、おしゃれに目覚め始めつつまだセケンとコミケになれていない初心さ。
その場ではさぞかし目立ったであろうな(^^;

ありがとおおお!
君のおかげで13年後も楽しめた。


前置きが長い(←いつも)。


本題である。
やはり彼はセンスがよいものを選んできたわい。
『躁鬱時代』は、奥付には「人間椅子劇画館」とサブタイトルがついている。
内容はコマ漫画が中心で、ライブやイベントのイラスト入りレポートがはさまっている形式。komugiko00も行ったライブも、いかなかったイベントもあり、どちらも別の意味で読んで楽しい。
表紙以外手書きなのも「時代」である。
なにしろ『羅生門』が新譜だったときだ。


絵柄はシンプルだが、なんとも雰囲気が出ていて、本人たちの立体が目に浮かびます。イベントレポートの鈴木のセリフなんか声まで聞こえる(^^; 
例⇒(大喜利
人間椅子とかけてチープトリックと解く。そのこころは、ベーシストだけが男前」
とかとか。
漫画はもちろん創作なわけだが、彼らが見せているイメージからはずれることなく楽しめる。
一番すきなのは二つの「3コマ漫画」である。
んー、文字で書いちゃっておもしろいかどうか自信ないが、いちおう書いてみる。
ひとつは「人間椅子」。人間椅子をつくろうと思った鈴木が、持ち込むものを考え(CDとかコンポとか)、結果ホテルのロビーに巨大な椅子がっ。というもの。和嶋が「どこのたわけだあんなんつくるの」と突っ込んでいる。
そして「人間失格」。楽屋で準備をするふたり。ギターを持って演目の確認をする和嶋が前景。その後ろでは化粧をする鈴木の横顔。コマの右外に、人間失格をもじった文章がかかれ、どうもそれが和嶋の意識を流れているらしい。あそこにもばい菌が、こちらにもばい菌が……というもので、3コマ目にはライブ会場の客の息から伝染病がマイクに……となる。
「まさか(ぞわあ」となる和嶋のうしろで、口紅を塗り終わった鈴木が、「ぱ!」と口をあけている。


そう、ここの人間椅子は和嶋と鈴木である。
ドラマーは後藤マスヒロであるが、ライブレポートの中で「ドラマー変わったの知らなかった」と記述がある。まあ助っ人だったし、あの段階では。
しかし、これもしみじみ時間を感じさせるのう、いまやマスヒロ抜きで人間椅子は語れまい。一時代を築いたよね。


ほかに……和嶋のことを「上品なハードロッカー」と呼んでいる部分があって、まさに、と思った。
komugiko00は、人間椅子のお行儀のよさが好きである。
鈴木も、腹を出そうが尻を出そうが、この「お行儀のよさ」があるからよいのである。
(ま、shinbashiは、「そこがいやなんだよ、オジーをみろ、ほんとうにどうしようもないぞ!」と言うけれど(^^;)。


しかし、このころは二人ともやせていて髪が長いんだよね。
現在の脂の乗った人間椅子にすっかりなじんでしまっているので、読みながら当時のことを思い浮かべて、なんだか立ちくらみみたいな(^^;感じがした。



komugiko00が持っているのはこの一冊だけであるが、稀田ラリ子さんはお元気で、今も椅子ファンでいらっしゃるだろうか。



羅生門

羅生門