観た!

観客。

三重塔の猫


世間はクリスマス気分の先日、喪服を着て和風な音を聞いていた。親族の百か日の法要が寺であったのだ。
世田谷区の豪徳寺。「招き猫」の寺として知られている。
そこにその親族の家の墓があり、法要もそこでするのである。


経を読んだのは老住職・中堅の僧・若い僧。中堅さんがとても声が良かった。
余談だが、読経の声といえば、だいぶ前、知人の葬儀に行ったときのことを思い出した。その人の実家はお寺である。住職はその人の兄弟で、読経の中心は甥、坊さん10人ぐらいならべた、そういう意味で豪華な葬儀であった。読経が始まれば当然それだけいれば厚みが……と思ったらそれだけではない。参列者にも仏教関係者が少なくなかったため、あちらこちらでプロフェッショナルな読経の声があがる。
ああ、すごい。カテドラルでグレゴリオ聖歌を聴くのもこんな陶酔感だろうな、というウルワシさであった。
しかし今回も3人いれば立派なものである。しかも中堅さんはいい声だった。


で、終わって帰るときに、三重塔の横を通った。
すると、そこを掃除している人かな???案内人なのかな???おじいさんに呼び止められた。
「三重塔に猫がいますよ」
えと(^^; 
クリスマスに喪服を着た数人が墓のほうから出てきたのである。観光客でないこともわかるだろうし、ただの墓参りでないこともわかるだろう。しかし猫である。
「このお寺は招き猫で有名で」
「ええ、知ってます」
と、喪主である婦人が答える。
そりゃそうだろう、この寺に代々墓があるんである(^^; 近くに住んでいるんである(^^; 
おじいさんは写真長を見せながら猫の彫り物の話を延々とし、喪主である婦人は、そうですか、ああそうなんですかと感心したように相槌を打っている

三重塔には、招き猫と、ふつうにりあるな猫の親子が彫ってあり、十二支も見える。
わりと新しそうだから、婦人も知らないのかな、と思いながらこちらも立って三重塔を見上げていた。


あとで婦人の長男が言うことには。
「うちのおかあちゃん毎回つかまってるんだ」


聞き上手というべきか。