観た!

観客。

好きな古文助動詞


「き」と「けり」だ。
なんでこれが日本語から消えてしまったろう。セットでつかうととってもいいのに。
どちらも過去で、「た」と訳すが、ちがいがあるのだ。
「き」直接過去:自分が経験したこと
「けり」関節過去:伝聞でしったこと

だから説話とかは「けり」(たとさ)で語られているわけだが。
これがセットで使われているのがkomugiko00は「好き」なのである。

たとえば源氏物語でこんな使い方があったと思う(記憶で書いてるので不正確御免)。
光源氏が、親友の頭中将に、前の日にあったことを話す場面。
「ひさしぶりに乳母の家に遊びに行っ(き)。部屋で酒を酌んで談笑してい(き)。すると、そとが騒がしくなっ(き)。乳母の家の下人が病気になっ(けり)ので、それを運び出した(けり)のだ。乳母が私にそう説明し(き)」

つまりねえ、自分自身で体験・確認したことと、人から聞いたことが、話の流れをそこなわずにきれいに書き分けられるわけですよ。
なんて美しく合理的なんだ。うっとり。


これはとても現実的で論理的な構造だと思うのだ、直接過去と関節過去をちゃらっとわけて語るということ。言語は思考であるからして、この文法を持っている人たちは、自分の見たことと人から聞いたことは分けて認識する思考をもっていたということになる――ま、理屈上はね――。そこが好き。