観た!

観客。

話術王決定戦第3回

9月22日の分である。
その日のブログに書いてあるけど、おどろきだけ。今もってあれはすばらしかったなあと思うので、いまでも覚えていることは書いておこう。
主役はバナナマン設楽。好敵手おぎやはぎ矢作。
    ※話術の内容に触れています。


komugiko00、まずこの話術王のルールが大好きである。
「同じ話を3回する」というもの。最初は規定時間内に普通に自分のスタイルで話す。それから条件と時間を与えられて、その条件下、その時間で話す。
これだけでもうすごく好き。
やってみたい。いや、「笑い」はムリだけど、「条件」「時間」にはめて話し方変える、っていうゲーム性は好き


で、出場者はみんなお笑い「芸人」である。いとうせいこうナイトの企画は、もう芸人の芸人たるところを見せてくれるものばかりなので、答えられぬ。
この日の出場芸人たちは、南海キャンディーズ・山ちゃん、おぎやはぎ・矢作、ペナルティ・ヒデ、アンタッチャブル・山崎、バナナマン・設楽、品川庄司・品川。
いずれも楽しみな面々。




印象の強いところだけ言うと。
設楽への条件で、「ダンディ坂野を交えながら」というもの。そこで、話始めてカナリ早い段階、感覚的には3センテンス目ぐらいでもう、しかも文の途中のヘンなところに、短く「ゲッツ」と入れて何事も無かったように話し続ける。さすが設楽。
矢作への条件で、「難しい言葉を使おうとしながら」というもの。話は面白かったが、難しい言葉は……本人曰く、「難しい言葉をぜんぜん知らないということがわかりました」。さすが矢作。
同じく矢作で、「デリクラのおねえちゃんに話している感じで」のナチュラルさ、一人での会話目線・間。さすが矢作。


で、いずれもおもしろかったのだけど、この回は決勝戦がすばらしすぎたので、その記憶が鮮烈。


先行矢作。与えられた条件は、「一度話したところにあとから遅れてきた人がいた」というもの。この条件がまず絶妙。
これが矢作のずるずるなしゃべりに非常に合っている。遅れてきた人にいいかげんな説明ですませるそのいい加減具合が的確(^^; さらに最後にもう一人遅れてきた、という落ちをつける。


採点は、満点に3点足りないだけ。それだけの出来だった。
設楽が勝つにはそれを越えなければならないが、今の「自然体だけどむちゃくちゃ巧い」しゃべりの直後、かなり難しいとはだれでも思う。


設楽に与えられた条件は、「シモネタにいきかかってはひきもどしながら話す」というもの。最初は設楽は困っていたと思う。普通につまらないシモネタ系単語を交えては話題を戻す、という風にやっている。ところが、途中からどんどん話が、動きが、ワクをはずれて展開していく。最後の「シトラスの香りがファ〜」に至ってはリアルだけどシュール。


「神が降りてきた」と、周りの芸人や審査員が興奮する。
そう、残念ながらkomugiko00、その話の展開をここで文字で書くことができない。テレビで観ていてさえ、設楽に神が下りてくる、トランスしていく様子に引きずられ、なんかイッちゃっていたので、理性で記録するのは不可能。
本人も、予想しなかった展開。「どうしようかと思っていたら、行ったらあった、行ったらあった、っていう」。


もし、二人の話を活字にした場合、もしくはそこだけ録画で見た場合さえ、どちらが面白いかは甲乙つけがたいと思う。設楽の話はもうシモネタがどうこうというものじゃなかったし。
ただ、深夜あの時間の生放送、やりなおしなしの緊張感のなかで、しかも満点近く出さなければというなりゆきの決勝戦で、設楽がトランスしていく様をそのまま見せられた、そのチカラ。全員連れてトランスしてしまった、その空気。


テレビで観ていてさえそうだったから、同じスタジオで目の当たりにしていた芸人・審査員たちのひきずられ方は、こんなものじゃなかったろう。みんなの目や顔が、「仕事」を越えて輝いていたさ。だから満点。トランスに満点。トランスだから満点以外ありえない。



  *  *  *


komugiko00はバナナマンのネタ、設楽の演技は大好きである。彼が「天才肌」と呼ばれていることも知っている。ただ、バナナマンの舞台は、いつもその高度な演技力で十分練られて見せてくれるものである。その完成度が好きである。
だが、その「過程」を見せてもらった、客としてはじつにおいしい、おいしすぎる時間であった。
こんなことなら録画しておけばよかった、と思った。だが、shinbashiが言う。
「それはその時間に見ていたからよかったんだよ。画面を通してでも、その瞬間を共有していた。それだからこその共感覚だろう?」
ん。あの「感覚」は忘れない。


矢作もあの時、すごい「腕」を見せてくれた。正直、予選から全部通して一番そつなく水準を保っていたのは矢作だったと思うし、決勝の話は、もう、隙の無い話芸と思えた。実際そうだった。あれに勝てるのは神しかなかったと思うよ。そして神がきちゃった。


そう、矢作は落ち着いて、ちゃんとテレビを見ている客に向かって芸をしていた。設楽のほうはかなりいっぱいいっぱいで、見ている審査員・芸人仲間に向かってやっていた。はじめは。ちょっと頼っているぐらいの目にさえ見えた。それがさ。
ある瞬間から、誰に向かってやっているのでもなくなった。
そして、その場の人間も、画面を見ている人間も引きずって、昇天。

シトラスの香がファ〜





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