『おふくろさん』考
作詞者の川内康範氏が亡くなったそうだ。
んで、森新一が『おふくろさん』を歌えるかということだが。
JASRACの見解はだとうだから、これに即せばいいだけのことではある。
ただ、komugiko00の希望としては、歌うときに、森が「川内氏の言っていたことをこのように理解した」という一言を先に公にしてからにしてくれるとすっきりするなあと思う。
もともとこの歌にべつにそんなに思い入れなかった(^^; どっちかというと半分ギャグで取り上げられることに慣れていると言うべきか。
ただ、昨年の川内×森のやりとりについては、思うところがあった。
森は不遜だったよね、最初の態度が。森は特別な声を持ったいい歌手だと思うし、「森新一のおふくろさん」というのは、もちろん一つの事実だ。
しかし、思うところ、というのは二つあった。
一つ。
森クン、表現者たるもの、他の表現者に敬意を払いたまえ。ということだ。創作者を軽んじるようなことは、表現者の魂にもとる。いや、「客」の魂にももとるんだけどさ。表現者であればなおさらのことではないのか。無知蒙昧な大衆が、「だって森さんのおふくろさんじゃーん」と言ったとしても、森クンはそうではないことを知っていなければならないのだ。
二つ。
森は、「どうしてだかわからない」とある段階で言っていたが、川内氏は説明しているので(どっちがさきだかはしらない)、「なぜか」を理解したのかどうかは言ってほしいのだ。
つまり、川内は普遍的な母親増として書いたのに、森がつけさせた語りでは、ものすごく特定の関係設定にしてしまっている。
これは歌の本質を理解していないということだから、それでは歌ってほしくない、という心情は当然である。さらに、勝手に他の人間に語りをつけさせた行為は、法律上の著作権として微妙なところだったとしても、上記の表現者への敬意を失したものである。
主観的には……。
おふくろさんの歌詞なんか(失礼)まじめに読んだのは昨年の騒動のときだったのだが、おう、なるほど、と思った。
川内の言うとおりだ。彼の歌詞は、普遍的である。「母なるもの」のもつ普遍的特性(川内思うところの、だが)が歌われ、状況を限定する具体はない。
へえ、さすがだね、と思った。
対して語り(保富庚午作)のところは、完全に状況・関係性が限定されている。
川内の歌詞なら、カネモチでも優等生でも、場合によっては母親がいなくても、どんな人にでも成立するものだ。
しかし、語りの方は、貧乏で、10代のころひねくれていたムスコにしか通用しない歌詞になってしまっている。
いや、最初からそういうものを描きたかった歌ならいいのだが、モトがそうでない以上、「損なった」「汚した」ということができるだろう。
だから、川内の指摘は明快であるといえる。森はそれを理解したのかどうか、理解したうえで賛同するのかしないのかを明らかにして歌うのがスジである。
んー、komugiko00的には、いいシンガーはべつに理解力や仁義に欠けていたって歌がよければそれでいいと思う。だから森がこのまま理解したかどうかうやむやにしたまま歌ったって、まあユルス。彼も年だからね、声の出るうちに歌いたまえ、と思う。
ただ、聴く側が、「べつにいいじゃない」というノリだとちょっとヤ。
だから、歌う側がスジ通してくれることで、聴く側にもそれなりの印象を与えてほしいなあとは思うのですね。
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昨年、騒動のあったときに、テレビのコメンテータをやっていた精神科医が、経過説明をずっとにやにやしながら聴き、さらに「これは一人の母親を男の子がとりあうという典型的な図式ですよ!」と笑いながら言ったのだ。心理学かじり始めの小娘じゃあるまいし。精神科のセンセイって、他の条件は省みずにそんな簡単に教科書どおりの分析しちゃうんですか? と思った。なんか文化に理解がある体でコメンテータとかコラムとか書いている人だったので、ブンカに理解ないじゃん、と失望したものだ。まあ、1年前の生放送なので、たまたま口走っちゃっただけで、今でもあの認識を持ち続けているわけではないだろうから、名指しでは書かないけど。
だからまあさ、そういうのもあるから、森新一さんには、筋通してくれるといいなあと思うわけですけどねえ……。