観た!

観客。

人力舎『バカ爆発!ツアー2006』


2006年9月3日
於 日比谷公会堂

※この感想はネタの内容に触れています。


祭りっぽい出し物にふさわしく、わいわいと3人で出かけた。
連れの二人は、出演の数組しか知らず、「じんりきしゃ」と言われてもとっさにわからないぐらいの感じ。なので、わりとまっさらな感想が聞けて楽しかった。
komugiko00は、マンガは雑誌でなく単行本で買う。音楽はもちろんアルバムで、各種ライブは「単独」「ワンマン」が好き。だからこの種のものに行くのはめずらしい。いや、なんとなくね、今回はノリで。


日比谷公会堂はひさしぶり。まだあったか、まだこのままだったか、とうれしい。昭和4年築だもんなあ。壁の無意味な模様もゆかしく、こういう戦前ぶりっ子の劇場新しく作ってほしいなあ。


2階席の真ん中あたりで、2000席の劇場としてはぜんぜんいい席じゃないのだが、まあ今回はあまりそういうことも気にせず。


司会は、テレビでおなじみのコンビが二組ずつ交代で務め、全30余組が出演。
「超新人」たちは1分だけど。

というわけで3時間超観てしまったので、詳細な感想を書くものでもなく、印象に残った順番に書くと……。


ネタの面白さでは、おぎやはぎキングオブコメディがベスト。別々の意味でベスト。
あとは鈴木拓のMCが〜〜〜(^^



おぎやはぎは、「結婚式の司会」のネタ。komugiko00は何度か観た。オンバトのDVDでぼけを実写した余計な映像まで見てるさ。その目からしても、非常にいいでき。呼吸といい口調といいもう実にこなれて、もうなんかの「境地」と言いたいぐらいだった。
連れの二人はこのネタは初めてだったので、ネタ自体もすごくおもしろかったようだ。加えてkomugiko00と同じく口調。矢作の「どうしても?」など、3人でくりかえし話しては笑えた。


キングオブコメディは、ライブならではのネタ(というか一部、テレビではできない部分が)。基本差別ネタ……というより排他ネタなところにあの発言……(^^; 彼らのあのテイストは、好きだー、好きだー、好きだー。
ブルーのサッカーのユニフォームを着た二人。今野は顔黒くしてモジャカツラで、「ヨントス」。それで、「おまえほんとはブラジルが勝ってよかったと思ってるだろ」「おれはニホンジンだ」的なやりとりを延々と続ける。延々ととはいっても、キングオブコメディなので、淡々と。そしてさまざまな「踏み絵」を用意するところが、淡々と畳み掛けるところが、眼目。
写真をヨントスの足元に投げて言う。
「ブラジルなんか忘れたならサンバの写真踏んでみろ」「できないよ〜、民衆の情熱の表れだよ〜」「それじつは浅草サンバカーニバルなんだ」「(一転ガシガシ踏みつける)なんで下町でサンバだっ」
……みたいなことをくりかえし、
「じゃあブラジルの国旗踏んでみろ」「できないよ〜、わが国の大切な国旗だよ〜」「わが国っつっちゃってるじゃん。じゃあ日本の国旗踏んでみろ」「(踏む)天皇制がなんだっ、象徴天皇ってなんだっ」「ここは日比谷だぞ」
いいね〜。
じつは「ブラック」と称されるネタの「ブラック」さに首をかしげることが多かったのだが、これこそ正統派のブラックの「笑い」である。ここでこまかいリクツはゆわないけど。この視点の置き方、このつや消しぶって要点のみの的確さ。


鈴木拓の司会は、もちろんただでもおかしい。そしてもちろんまわりはそのおかしさをあおる。なかでもおかしかったのは、「超新人1分ショー」のときである。つづけて何組も見せ、よきところで司会のおぎやはぎドランクドラゴンが出てくる。矢作は自然にほめまくり(いつものアレだからあやしげだが)、拓も「おもしろかった〜」とか言っている。そのうち拓*1が、「なんか、今流行のフレーズ芸みたいなのがなかったよね」
何を言っているのかは明白である(^^; すぐに三人が、「え? なに? なんのこと? わからない」と応対する。拓もいっちゃまずいと思ったのか、ちょっとうろたえつつ、「え、ほら、なんか音楽があって、フレーズ言うような……」「そういうのある?」「なんかそういうのじゃじゃなくてみんなストーリーがあってよかったと」「何の話?」「あるじゃないか!」「たとえば?」「言っちゃまずいでしょ」「わかんないもの」「コウ……」「え?」「コウメ……」「え!」「いや、つまり今の新しいスタイルがなくて古かったってこと!!」「古いって……」「いいよ、みんな後輩なんだから」
ははは、わりと同感だけどね、拓。


そういえばおぎやはぎのほめっぷりは客にもおよび。超新人がこんな2000人もの観衆に見てもらえるなんてという話になって、「しかも今日のお客さん、いいんだよ、すごくいいお客さんなんだって」という、いつもの根拠のない話し振り(^^; でも言われてみると悪い気はしないもんですな(^^;; 


その超新人では……名前がわからないのだが、テレビでも見たことがあるデブの兄妹がうまくて、銀行強盗ネタやったピンの人が奇妙で、それと、地味なコンビでちょっといいのあったけどなんだったか忘れた(立て続けに観すぎ)。


そう、三時間超、立て続けに、おなじみさん・超新人・その中間の三段階を見たわけだ。んー、いい客体験かも。構成は、前半が中間層、それから超新人を挟んで最後がおなじみの人々、という感じ。だいたい。
で、友人たちと、うまい人々とそうでない人々の違いは、まあいろいろあるわけだが、「間」だなと。


そういう意味では前半の締めで出てきた東京03と田上よしえは、その前の芸人たちとは1ランク上ということをまざまざと感じさせてくれましたよ。
連れの友人は東京03のことをしらなかったらしいが、それでもまったく格が違ったといっていたので、付き合いの長い(アルファルファもプラスドライバーも好きだった)komugiko00の贔屓目なわけではない。んー、この3人になってから、あきらかによくなってもいるんだけどね。
田上のことは友人も知っていて、「最近観ないと思ったけど、さすが」。ん。


ネタの違いはあえて触れないけど、まず単純にカツゼツがいい(^^;
2階は音響ひどくて聞こえづらく、お上手にしゃべってくれないとよくわからない。田上は聞こえない言葉なんか一つも無かったしね。東京03もである。


ま、カツゼツそのものもそうだけど、「間」なのである。
うまい芸人は、切れ目無くまくし立てているように見えても、ちゃんと「間」を取っている。だから聞こえるし、笑う隙もあるのである。


今回それが3段階でわかった。超新人、おなじみさん、その中間、きれいに分かれる。あ〜、塚地に「芸暦50年」と言われていた兄妹はカツゼツといい間といい、ほんと、ベテランのようだったけど。


というわけで「最後のブロック」=知られている6組のたたみかけは圧巻であった。
あー、最初の北陽がいまいちだったんだよね。友人の一人は北陽の初期を知っていて(しかも埼玉出身で「北陽高校」にもなじみがあるとかで)、好きだったらしいのだが、「いまいち」。ん。私も、最初に彼女たちを見たときにはshinbashiに語りまくった記憶があるが、いまいち。はねとび仕様がよくないんじゃね? とか思ったり。komugiko00はもともとあのネタ(「おのでらさん」)は北陽のなかではあまり好きではないからまあそもそもいまいちだったりはするけど。MCで柴田がからかっていた大阪のように「引く」とか「静かにさせる」とかはなかったけど(^^;(ネタがちがったのか??)、友人ともどもちょっと残念。 
だが、そのあと、キングオブコメディおぎやはぎドランクドラゴンアンタッチャブルアンジャッシュ、とくるつながりは、もう、3時間見て疲れてきている客が尻上がりにひっぱられていく勢い。
新ネタでなかったのは、ラストを手堅く固めてきた、というお祭りの構成であろう。トリのアンジャッシュが「桃太郎」のネタだったのも、最後をリクツよりヴィジュアルでっていう感じだったのかもしれない。連れの二人は未見のものが多かったようである。観たことがあってもなくても、この面子が手馴れたネタを手馴れた感じでやれば、いやでも安定しておもしろい、ということだろうか。以前に見たときより格段に「いい」ものを見せてくれたのはおぎやはぎだけで、あとはお祭りだけに(?)ちょっと荒い部分もあったが、勢いと表裏ということで、マイナス点にはならない。てか、「荒い」というのも、あくまで彼らとしては、という高い要求水準での話であってさ、全体の完成度はすでに高いわけですよ。ネタが良くできていて、カツゼツや発声も訓練できていて、間も呼吸もわかっていて、手馴れていて、今油が乗っていて、だからこの舞台は「ホーム」の試合で……まさにそういう「旬の珍味」ぶりを見せてもらった。


終わってから、帝国ホテルのティールームでケーキとお茶を嗜みましたわ。
一人がモンブランを注文して、「ウェディングケーキがモンブランでもいいよね」というともう一人が「うん、いいよね」と言っているのを眺めつつ(^^;
そしてその二人が、「なるほどこれが人力舎か」的なことを言う。あきらかにカラーがあると。で、それを「中央線っぽいよね」と言う。
そう、まさに高円寺の感じなんだなあ。中央線は東京から高尾まで通っているわけだが(あ、松本まで、っていうのかな、鉄道には詳しくない。少なくとも「オレンジの」中央線は高尾まで)、われわれとしてはあれは「中央線の中野〜三鷹間」のテイストなのだ。
じつは三人三様にそのエリアにはゆかりがある。出身地・現住所・職場。だからその「水」にはじつになじんでいるのだが、人力舎のテイストはまさにその水で育った……なんらかの生キ物。という感じがして、なんか親近感が。


夏の終わりの日曜の午後、としては、よい過ごし方だったかと。


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*1:原則「苗字で呼ぶ」shinbashi&komugiko00であるが、ドラドラの鈴木拓はなぜか「タク」である。「タ」にアクセント強めにして、少し高いトーンで、軽く言い放つ感じで、「タク」と呼ぶ。もともとshinbashiが言い始めたもの。まあ、komugiko00が単に「すずき」というと、あの半妖怪の人のことになるので、いちいち「ドラドラの鈴木」といっていたのは面倒だったけど。でも「タク」と呼んでみると、とても似合うので、定着。あ〜、でも、タクも半妖怪だよな、白塗り和尚とは別の意味で